旅行記(ザンクト・モリッツ、ツェルマット、ミラノ編)その3

 

出発後すぐトンネルに入る、とイタリア入国管理官がパスポートコントロールにきた。車両はコンパートメントになっており6人用の室内に私達と2人のイタリア人が座っていたのだが、私達には目もくれず、2人の内、トランクを持っている方のイタリア人に「トランク開けるぞ!」みたいな事を言ってそれこそ一つ一つ調べ上げている。「もうイタリアに入ったの?」と主人に聞くと主人はもう一人のイタリア人に同じ事を聞く。その男性は「こいつが調べまくってんだしもう入ってんだろう。」のようなことを目で話す。調べ終わると私達のパスポートには見向きもせず去っていった。  

とにもかくにも私の初イタリアである。と思ったところでドモドソーラで入国管理官が車内に入ってきた。なるほど、先ほどの人は関税のために高価なものや税のかかるものをもって入国していないかチェックしていたのである。そう言えばチェックされていた男性は、ピシッと高そうなスーツを着ていたし、私達と言えばいつものようにジーンズ姿、どう見ても高いものを持ってるようには見えない。パスポートコントロールは顔と写真をチェックする程度で終わり。    

車窓から見るイタリアはやっぱりスイスとは違う。灰色の建物が多いなと感じたし、スイスの方がこざっぱりしている。ミラノに近づくにつれて工場が線路沿いに連なっている。  産業の北イタリアと言われる意味が何となく分かった。地中海気候を利用したブドウ畑や、その他農地を想像していたがそうでもなかった。そして車内に乗り込んでくる人にもおしゃれな人が増えていく。いよいよミラノへ5時、到着だ。駅構内はチューリッヒ駅と比べると薄暗い。ヨーロッパの駅に多い、取り込み式の駅だ。  

そこからホテルSampiまでは徒歩約25分。不思議なことにフロントではパスポートを要求された。預かるというのである。「10分か15分後に返すから。」という。思わず主人は「何か複写できる特別な機械持ってるんじゃないだろうね。」と聞く。恐らく警察にパスポート番号を言って、国際的な犯罪に絡んでないかとか聞くのだろうか。よくわからなかったけどとりあえず無傷で返却される。    

 荷物を降ろして、近くのブエノスアイレス通りをミラノ中央駅の方へ歩くも、空きっ腹を癒してくれるレストランがない。イタリアに来たのだからピッツァかパスタを、と意気込んで来たのに、ファストフードのピッツァ屋さんくらいしか見つからない。驚いたことに中華レストランの多いこと。通りにごまんとイタリアレストランがあふれていると思っていた私はちょっとがっかり。とにかくこれというようなレストランがなく、私達は中央駅前のピサーニ通りを下りてテクテク歩きまくり、ドウオモまで来てしまった。 途中、ライトアップされたファッションディストリクトを通り、しばし空腹感を忘れさせてくれる。ライトアップされたドウオモはきれいだった。ヴィトリオ・エマニュエレU通りをちょっと横に入ったところにあるこぎれいなレストランに入った。私は海の幸パスタ、主人はサラダ、赤ワイン、サーモンのピッツァで計5万8千リラという安さで、ピッツァなんかは直径30センチぐらいありそうな大きさ。私の頼んだパスタもイカやらアサリやら5種類ほどの魚介がひしめき合っている。おなか一杯で2人とも大満足。途中、日本人団体旅行客15人ほどがぞろぞろと2階へ。彼らも満足したんじゃないかな。食後は腹ごなしに徒歩でホテルへ戻った。もちろん疲れ果てて深眠。

 次の日は、初めて目覚ましをかけず、自然に目が覚めるまで寝た。結局目が覚めたのは8時30分。今回利用した旅行代理店からは、イタリアではあまり朝食は期待しない方がいいと言われていたが、北欧スタイル。チーズやサラミはもちろん、様々なパン、果物と朝から腹一杯食べる。  

 今日はゆっくり10時30分ホテルを出発。まずはドウオモのてっぺんへ。一つ一つ違う彫刻に感嘆し、主人もビデオを回しまくっている。典型的なゴシック建築らしい。下りるときは狭い階段で。そして、中の教会へ入る。なんと言っても、ステンドグラスが天気の良い光を受け、様々な色に反射しきれいこの上ない。聖書のストーリーをステンドグラスにしたものがあり首が痛くなるまで見上げて全然飽きない。    

 その後あたりをぶらぶらしてギャラリーヴィトリオ・エマニュエレにあるレストランで昼食。びっくりしたことに、水とラザニア、ミートソースパスタのみで4万リラ、しかもボリュームは昨日の半分以下。やっぱりこの通りは高いようだ。ただ、クレジットカードが使えずキャッシュだと1000リラほど足りない。ボーイさんは「いいよいいよ。」となんとまけてくれた。このあたりは、私の頭にあるイタリア人のイメージとぴったりで思わず笑ってしまった。  

 食後「最後の晩餐」を見に行くも予約客のみ入場可で渋々あきらめる。そしてスフォルツェスコ城へ行く。このお城は周りにお堀があるが水は張ってなかった。私の思ったところ、荒れ果てた城という感じ。デザートにティラミスとカプチーノ。明日はジェラート食べたいなあ。     

そしてブランド店巡り。日本人客ばっかりで、次々とお買い上げー。私は目の保養のみで、やっぱりブランドという柄じゃないなあ、と思ってしまった。さすがに今日は5キロは歩いたろうか、ホテルに戻って夕食前に休憩。夕食は再度ホテル付近で何とかレストランを探すことにする。    

 日本のガイドブックに書いてあるレストランの中で一つホテルに近いものがあった。Caralliniと言う魚料理専門のレストランで、スイスに住んで魚の種類の貧弱なのに嫌気がさしていた私は早速そこにしようと言った。さすがに日本の本に載っているからか10人近く日本人が入ってきた。ただ地元の人に有名なのか、ボーイさん達と顔見知りのお客さんも多かった。主人はサーモンサラダと、ほんれんそうとスカンピのタリアテッレ、そして赤ワイン。私はカプレーゼ、スカンピとイカの唐揚げ。たくさんの魚を食べれて幸せ。それからもちろんDolci、2人でアップルトルテを食べる。様々な種類のDolciがワゴンに乗って運ばれてきて目移りしてしまった。計12万リラほどだったが、お店の格、料理の質、サービスの質、そしてイタリア人と一緒に食べているという雰囲気を考えるとチューリッヒではまず考えられない値段だ。

05/08/01