ママのたまご記1
子宮内膜症の二大症状は、痛みと不妊である。勿論全ての人が痛みを感じているわけではないし、全く痛みもなく別のことで病院に行ったときに子宮内膜症がわかった人もいる。子宮内膜症だからといって子供が出来ないわけではない。癒着などで卵管の通りが悪くなったりして子供が出来にくく、手術で通りを良くしたらすぐ妊娠した人もいる。どちらにせよ、痛みは日常生活に支障が出るし、不妊というと、女性の人生計画に支障が出る。
私の場合は、痛みに関しては、手術で卵巣の内容物を取ってもらったし、卵管の通りもチェックしてもらった。その後の偽閉経療法とも兼ね併せて、痛みはかなり軽減した。ただ、不妊かどうかはこれは全くわからないことだった。主人と結婚の話をするようになった頃、私は何度か彼に確かめた。もしかしたら子供は出来ないかも知れない、と。それに対して、いつも彼は、子供が出来ればそれは素晴らしいし、子供が出来なくても、子供が欲しいが為に結婚する訳じゃないからそれもそれでいい人生になるはずといった。それに、もし子供が出来なくても私でなく彼の方に出来ない理由があるのかも知れない。君は、手術もその後の治療も、やるだけのことはやったんだから、後は人生なるようになるはず、と、いつも言った。彼が、人生に前向きだったので、私の大きな心配事は簡単になくなった。そう、子供がいないと素晴らしい人生にならないなんて事はないのだ。人生なるようになる
子宮内膜症の定期検診で、スイスの病院を訪れたとき、主治医は「子供が出来たら治る、というわけではないけれども、子供が出来ればまず内膜症の症状自体がそれほどひどくはないと言うことだし、何より薬に頼らず自然な形で生理から遠ざかることが出来る。授乳期間も入れれば2年ほど生理のことは気にしなくても良い。子供を作りなさい、とは勧めないけれども、妊娠できれば私はうれしい。」といった。妊娠すれば、生理のことも、再発のことも、痛みのことも気にしなくても良い。勿論それは結局その場しのぎで、数年もすればまた再発するかも知れないしそういう人は多いと聞く。ただ、私は絶対に子供は一生涯要らない、というのでもなければ、今の、原因がわからず確固たる治療法もない医学では、子供が出来、内膜症が一時ストップする妊娠はいわば一石二鳥なわけだ。私も、手術を受け、腹くうもきれいにしてもらったのだから、それから何年か経っているとはいえ、わざわざ妊娠を避けることもないと思った。主人も同じ気持ちだったので、コウノトリじゃないけど、自然に任せることにした。
子供は出来るときに出来る。出来ないかも知れない。誰もそれはわからない。でも、毎月生理が来るたびに、痛みがないのにうれしい反面、妊娠してないことにがっくり来た。そんなこともつかの間、結婚して半年足らずで妊娠していることがわかった。基礎体温を付けていて、比較的規則的に生理があったので、そして、最近の妊娠検査薬の質がよい事もあって、5週目(日本で言うと4週目)で妊娠が確認できた。だけど、あまりうれしくはなかった。というのも風邪を引いていて、ああどうしよう、子供が健康に産まれなかったらこの風邪のせいだ。ちゃんと育つんだろうか?と心配だったからだ。
次の日、主治医の先生に診てもらい、尿検査で陽性、経膣超音波でも、しっかりと子宮内に着床していることが私の目にもわかった。また風邪が直接奇形児の理由にはなりにくいし、10ヶ月間一度も風邪を引かない妊婦さんも珍しいと言われ、超音波画面の胎芽に対してやっとうれしいと思った。先生も「妊娠できて、私は本当にうれしいわ。ほっとしたわ。」と言ってくれた。 主人も、先生が心配することはないと言ったんなら、大丈夫だとまたまた楽観して、喜んだ。 なるようになるさ、と子供を諦める覚悟をしたのが良かったのか、こうして私は「妊婦」になった。
26/05/00