ママの出産記録3
夏の夜が来る頃、私は、赤ちゃんがいよいよお尻の辺りまで下がってきているのを感じていた。もうこの頃には陣痛の間隔とかそんなものはよく分からなくなっている、いつでも陣痛状態。いつも叫んでいる状態。ヘバメが笑気ガスを勧める。私は藁にもすがる思いで食らいつくようにそのガスを吸った。吸い続けるものだから「今は陣痛は遠のいてるはず。リラックスして!」と言われる。 私をリラックスさせるためだろうか、ヘバメが「赤ちゃんの頭が見えるわ!髪の毛が見えるわ!」という。私には見ようがないのだが、主人が見ても良いかと、見に行く(オイオイ)。
「ほんとだよー。見える、見える、もうちょっと。」でもその時は「くそー、何を呑気に喜んでるの!こっちは死にそう!」と心の中で叫ぶ。 出産もいよいよ最終段階なのに、赤ちゃんの頭は子宮口で止まったまま。これならもう先に進みようがないし、私は勿論、赤ちゃんも疲れてくるので、医師を呼んでくると言われる。 診察に来た医師は、予定日過ぎの検診、破水して入院したときの検診の時と、たまたま同じ医師だった。彼女とその上司の判断で、後30分してもまだ止まったままなら吸引しましょう、ということになる。
果たして、30分後、やっぱり止まったまま下りてこない。吸引の用意が始まった。器具を産道に入れるからちょっと痛いけど、と言われる。その痛いこと痛いこと!陣痛とは別の意味で、激痛という言葉では足りないぐらいの痛さだった。叫んでばかりいるので、医師が「もう器具は入ったから!落ち着いて!リラックスして!」と怒られる。それからウィーン、ウィーンと間抜けな音がする。恐らく吸引中だろう。だが私は、いきみたいし、痛いしで叫んでばかり。 主人が「あーっ!見えた、頭が出てきたよーっ!ほら!ほら!頭が出たー!あー、やったー出てきたぞーっ!」と興奮気味で実況中継。私は、吸引が痛いし、陣痛も極期だしで、何がなんだか分からない状態だった。そして、、、
「フギャー、フギャー」と産声が聞こえた
「男の子よ!」(実は、私にはこれが聞こえていなかった。) 「この子は大きいわ。」「ホント。」「大きいですね。」「大きい赤ちゃん。」ヘバメ、見習いヘバメ、医師2人が口々に言う。すぐタオルに包まれて、へその緒のついた状態でお腹の上にのせられる。確かに小さいとは思わないけど、そんなに大きいのだろうか?タオルをまくって、男の子と自分で確認する。 「会陰切開しました?」多少の希望を残して聞く。「勿論!」いつ切ったのだろう。チクッとしたときがあったけどあれかしら?いずれにせよ、陣痛の痛みと共に切ったのだろう。私は、何故か陣痛の始まりは夜中で、8時間ほどで会陰切開もせず生むだろうと思っていたので、なんだか難産でがっくりだった。でも子供が健康である以上安産なのかも知れない。
主人がなにやら待っている。へその緒を切るのを待ってるのだ。大仕事だもんね。「体重いくつだと思う?あなたたちはいくつで生まれてきたの?」と医師。「私は3700ありました。」「僕は、、、僕も多分それぐらい」 早速量るとなんと、、、4255グラムもあった。私は3255の聞き間違いかと思ったが、なんと重い赤ちゃん!分娩室の6人全員がびっくりである。
ヘバメに助けてもらって初乳を含ませる。本能はすごい。息子は自分から母乳を求めて吸い出す。そしてきっちりと胎便も出していた。 またかすかな陣痛。胎盤を出すためにいきむのだが出てこない。そこで分娩台の上で、和式トイレの格好でいきむことになる。いきみたいわけでもないのに変な感じだが、何回かいきんで胎盤が出てきた。「やっと2人目が生まれたわ」とヘバメ。普通は500から600グラムなのに私のは800グラムもあった。
医師が会陰切開の縫合を済ませ、退室する。そして、8時間近くの超過勤務のヘバメと見習いヘバメも、次のシフトのヘバメと交代する。私は心から言った。 「本当に有り難うございました。」 (注:へその緒を切る前に初乳を含ませたのかとか、胎便が出てから体重を量ったのかとか、その辺の産後の処置の順序の記憶が曖昧です。)
体重4255グラム 身長53センチ 頭囲37センチ(出生時)
08/03/01