ボン君の成長記録(1ヶ月目)
いきなり入院中に話が戻ってしまうけれど、病院でコットに入った息子が私の方をじっと見ている表情が今でもたまに思い出されることがある。他の誰にも注意が向いていない。私だけをじっと見ているのである。母のことが本能で分かるのだろうか?見られていてすごく不思議な感覚だった。
当の私と言えば、産んですぐお腹の上にのせられても、我が子だという実感がよく分からなかった。ずっと一緒だったはずなのに、当たり前だがどんな顔かも性別も知らなかったので、「これ」が入ってたの?ずっと一緒だったのは「これ」だったの?と言う感じだった。
「あなたはいったい誰なの?」という気持ちだった。授乳していても、じっと見られても、産後すぐヘバメに「こういう顔つきの赤ちゃんは今のところあなたの赤ちゃんだけだけれど、念のため名前カードを手首に巻いとくわね。」と言われるほど私そっくりな息子の顔を見ていても、我が子である確信がなかった。正体も分からない物がお腹にずっと隠れていて、いきなり目の前に現れても私はどうしたらいいのか分からなかった。産んで半年以上たった今は、この子じゃないと駄目!と言う気持ちだ。でもいつからそういう風に思うようになったのだろう、、、。
産後ブルーについて書かないわけには行かない。入院中はいつも涙を流して泣いていた。
息子に黄疸が出て、これぐらいは普通よと看護婦さんに言われても、そして自分でも黄疸のことはきちんと本で読んで、普通だと分かっていたのに、黄色い体の我が子を見てオイオイ泣いた。
おしめを換える時大量のうんちをされていてオイオイ泣いた。
息子が泣いても何で泣いているのか分からずオイオイ泣いた。
会陰切開の傷が痛むたび、体の疲れを感じるたび、「どうして私だけが?」と悲劇のヒロインのようになりオイオイ泣いた。
同室の女性は家族の結びつきが強いらしく、毎日毎日いろんな人から、同じ人から何度も訪問を受けていた。私には夫の家族を除いて訪問してくれる人は誰もいないんだ。私の家族も、○○ちゃんも××ちゃんも来ないんだと思って同室の女性が羨ましくてオイオイ泣いた。
退院して私が最初にしたこと、それはベットに崩れおり「疲れたのよおー!!!もう、疲れたのー!!!」と主人に言ってシクシクと泣いたことだった。
さて、退院してからの私の育児メモを見てみると、母乳のことが頻繁に書いてある。最初の方は、いつ搾乳して、いつあげてなど、、、。そして次に、右胸、左胸、それぞれ何分ずつ授乳したか、、、。直接授乳に変わってからはどれだけ飲んでるのかが分からず、分数を頼りに、毎日毎日「これだけで足りてるのだろうか?もっとあげないと体重が増えないんじゃないだろうか?」と飲む量の心配ばかりしていた。
しかし1ヶ月検診で、体重も身長も頭囲も大きくなっている息子を見て、生きる力はこんなに素晴らしい物なのかと感動した。毎日毎日一日中ずっと見ているからわかりにくいけれど、息子は確かに生きて行ってるのだ。
その1週間後、私の方の産褥経過の検診があり、会陰切開の傷は、人よりやや長めらしくまだ完全に治ってはいないけれど、子宮の戻りや、経過は良好と言われる。まだまだ、家事で立ちっぱなしはかなりきついし、座るときに、ドシッと勢いよく座るなんて事は無理だけれど、近所のスーパーに買い物に行ったりと、だんだん行動範囲を広げるようになった。
それまでは当たり前だけれど、2人暮らしだったので、主人が会社に行っていれば、家には私しか居なかった。産後は、朝主人が会社に行った後、まだまだ疲れている私は、再びベッドへ戻ったのだが、よく、いきなり聞こえてくる息子の寝息に飛び上がるほどびっくりしたことがあった。私以外に誰かがこの家にいることがすごく変な感じだった。かといえば、夜、息子が寝息も立てずに寝ていると、死んだんじゃないかと、体を揺らして生死を確かめたりすることも多々あった。
考えてみれば、主人も新しい家族にとまどっていたり、主人なりに体力的にも精神的にもきつかったはずだけれど、会社の帰りに食料品を買ってきてくれたり、最初の何週間かは洗濯もしてくれて、それを私は「もっと、全部家事をしてよ!」と心の中で思ってたりしたのだから、今となっては素直に感謝するばかりだ。(でも夜はひたすら熟睡できるあなたが非常に恨めしかったです、、、。)
生後5週間ほどした頃、産んだ病院の小児科で、股関節脱臼があるかどうかの性能の良い超音波のような物でのチェックがあった。私は赤ちゃんの頃、股関節脱臼だったので心配だったが、息子は大丈夫だった。
その時、そこに入院している、様々な赤ちゃん、子供を見た。一体何グラム(何キロじゃなくて)なの?っていうぐらいの小さな小さな赤ちゃんや、たくさんの点滴を連れて歩いてる子供がいた。
ところで、息子の1ヶ月検診は、息子の加入している保険会社(たまたま私と同じ所)の診療所で行われたのだが、この股関節脱臼のチェックは、その器械が診療所にないため、産んだ病院でしたという経緯がある。一旦立て替えだが、これも勿論保険から支払われる。
少なくともここチューリッヒでは、秋から春前までの日照時間を考慮に入れてだろうか、生後2週間目からヴィタミンDを摂取するように言われる。これは骨の生育に不可欠のようだ。薬局で、処方箋を見せて買い、ドロップ式なので、母乳やミルク、離乳食に混ぜて1年間毎日飲ませる。
体重5450グラム 身長57センチ(生後1ヶ月 生後丸5週)
09/04/01